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忘却の力 創造の再発見
外山滋比古著 みすず書房(2008年7月) 現代社会の知識信仰に対する警告でもある。 「忘却」というとネガティブなイメージのほうが大きかった印象だが、それも大切なことだと説く。 逆転の発想。 各篇は、数ページからなる読みやすさで、トピックはそれぞれ異なるが、どれも核心をずばりとつく。 なんだか良質のブログを読んだように感じた。 いくつかのテーマは対話調になっていて、その表現の仕方も面白い。 共感するところもあるが、ちょっと考えてしまうテーマもあり、それらがいろいろな方向から自分の頭を刺激したように思う。 いま書店では、同著者の「思考の整理学」文庫本が平積みで置いてある。 読んでみよう。 ********************************************************** 一般に、言語知の方を暗黙知より高いもののように思っている。教育がすすむにつれて主知的になるのであろう。知識の害ということはほとんど考えない。 若いときに、創意工夫に満ち満ちた人が経験をつみ、知識を蓄えて大家になると、知的活動がはっきり不活発になり、重箱の隅をつつくようなことをして、それを誇りとするようになる。人間はどうも言語知がふえるにつれて創造的でなくなるらしい。 暗黙知の大愚は言語知の大賢にまさることがすくなくないが、人はそういうことに目を向けない。 外界を知るためのことば、知識のはずである。それが充満してくると、おそろしいほど堅い殻をつくって人間を閉じ込めるようになる。ことばの向うに外界のあることも忘れてしまう。おわりには、ことばのみありき、というわけである。 知っているものごとの外側に、未知の世界がひろがっていることを想像する力すらいつしか失ってしまう。 ことばの殻を破ってこそ真の知性である。 (「ことばの殻」より p2-4) 継続は力なりというが、ただ続けているだけでは力にはならない。休止をはさんで、くりかえす、そういう継続でないと大きな力は生まれない(ことを鉄柱から教わる)。 継続は習慣をつくる。いったん習慣になったものはおそろしいほどの力をもつ。習慣は終わってしまっても、当分の間、残曳作用をおこすのである。 ただ、その反復、継続ということの中にリズムがなくてはならないことを、見落としがちである。 そのリズムは活動と休止のくりかえしによって生まれる。休止はなくてはいけないが、長すぎても調子をくるわす。 (「習慣」よりp23-25) バーナード・ショーは大へんな筆まめで、おびただしい書簡を遺した。そのショーが、「きょうは体力がないから、長い手紙を書くが、あしからず…」という書き出しの手紙を書いた。簡潔は分別の精髄、というが、短い文章は長文より力業を要することを知っていて、こんなことを云ったのであろう。 アメリカ代二十八代ウィルソン大統領は歴代大統領の中でもきわ立った雄弁家とされているが、短いものの難しさを知っていた。 「二時間の演説なら、すぐにでも始められるけれども、三分間のスピーチだったら、一晩は準備しないといけない」 われわれ人間は小さなものにとらわれる。つまらぬことにかかずらわるのではなく、小さなものの中に宿る神に惹かれるのだろう。 (「小さきもの」より p109-111) 知識を習得するのは、いってみれば、ものを食べるようなものである。少量ならとにかく、食べすぎると、消化不良をおこす。そこまで行かなくとも、満腹すれば、あとどんなご馳走にも手が出なくなる。適度の空腹がいちばんよい状態だ。その快い空腹になるには、食べたものをどんどん消化、余分なものは排泄してやらないといけない。 忘却はこの排泄作用を頭の中でしていると考えられる。 ただ知識の多いことを喜んで、適切な忘却をなおざりにしていると、なんでも知っているバカ、知的メタボリック症候群にやられてしまう。効率的忘却は、きわめて現代的課題である。 選択的忘却を促進する方法はいろいろ考えられるが、記憶作業をしたあと、休む方法がある。 それとは別に、寝させる方法がある。風を入れる、と言ってもよい。時間に助けてもらって忘れるのである。 もうひとつの忘却法は、新しいことを考えること。浮世ばなれた、空の空たることを考えていると、おのずと、多くのことが消えていき頭がさっぱりきれいになるような気がする。新しいことを覚えるのではなく、新しいことを考えると、おのずから頭は整理され、その分、頭のはたらきもよくなる。 (「忘却-あとがきに代えて」より p178-183) ***********************************************************
by ou_allons_nous
| 2009-07-29 05:00
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